今回紹介する本は大矢康裕さんが書かれた”山岳気象遭難の真実”という本です。
結構重たい本ですが、趣味として登山を楽しんでいる私にとっては、必要な知識と思いました。
そのため、広く初心者の方にもわかりやすいようにかいつまんで本書を紹介したいと思います。
といっても”雷”のことを熱く書いてしまいました笑
これは、私が読んでいて重要と思ったことをまとめた備忘録のようなものです。よって私のような初心者の目線で書いているため、同レベルの方に読んで欲しい内容です。
ここで全てを紹介することが難しいため、気になる方は、本書を購入して熟読しましょう!
登山をする上での基礎知識
登山は自然が深い山に足を踏み入れる行為で、平地と違い、何か問題が起こったときにすぐにさまざまな助けを得ることができない場所に行くことです。もちろん楽しいからするのですが、危険があるということも十分認識する必要があります。
その中でも登山をする人にとって、気象はとても重要な要素です。
かくいう私も全然気象について勉強してこなかったため、登山をするようになり初めて、気象学が気になり出しました。その中で私が本を読み、初心者として登山をする人に安心して楽しんでもらうための知識を共有したいと思います。
今回共有する知識は以下の通りです。これだけでは当然不足していますが、みなさまも参考にしていただきたいと思ったため、共有させていただきます。
・爆弾低気圧
・二つ玉低気圧
・低体温症とは
・梅雨
・落雷
爆弾低気圧とは
みなさんも一度は耳にしたことがあると思いますが、名前の通り、爆弾の爆発のように急速に発達する低気圧のことです。元々は米国の学者が提唱した用語で「BOMB CYCLONE」と呼ばれますが、日本の気象庁では、”急速にはたする低気圧”と呼ばれます。
圧倒的に春と秋に発生することが多く最初は米粒みたいな低気圧が急速に発達し、急な悪天候を引き起こします。
二つ玉低気圧とは
前述した爆弾低気圧も山岳遭難の原因の一つではありますが、それだけではありません。
二つ玉低気圧という”日本海の低気圧”と”日本の南海上の低気圧”が同時に発生する状況を二つ玉低気圧と言います。
この二つは最終的に北東に進み、爆弾低気圧になり、最後は合体して一つになることが多いと言われています。この爆弾低気圧になった時の悪天候はもちろん危険ですが、二つ玉低気圧と聞いた時に、まず思い起こすべきワードは”疑似好天”です。これは二つの低気圧に挟まれた箇所で一時的に天候が回復することを指します。この”擬似好天”に騙されて、登山を継続した結果、取り返しのつかないことになった事例を本書では詳しく解説してくれています。
低体温症とは
山に登る行為は気温が低くなるところに行くということです。夏山にしか登らないから関係ないと思われている方もいるかもしれませんが、一般的に”1,000mあたり約6℃気温が下がる”、”風速1m/sあたり体感温度が1℃下がる”、”濡れた下着を肌につけた状態で強風を浴びると体から熱が奪われる”と言われており、夏山登山であってもアルプスなどにある森林限界を超えた箇所を歩くこととなる際に条件が揃ってしまいます。
低体温症になると、サバイバルシートにくるまる・樹林帯に戻るといった危険回避行動をとる正常な思考能力も無くなってしまうと言われています。
この発生を防ぐためには正しい知識と正しい判断で然るべきタイミングで登山を中止することであるが、初心者に覚えておいていただきたい知識の一つとして、”行動しながら食べ物を補給する”という知識がある。人体が発熱するためには食事からカロリーを補給する必要があります。この知識は低体温症になる可能性があるサバイバル状況に陥った時に備えておくべき知識と感じています。
梅雨についてもっと知ろう
登山をする人以外でも馴染みのある言葉である梅雨ですが、毎年のように豪雨をもたらします。
近年の豪雨時によく聞く言葉である”線状降水帯”ですが、これは積乱雲が線状に連なって同じ場所に停滞することを言います。一つ一つの積乱雲の寿命は30〜60分と言われていますが、次々に発達して積乱雲が流れてくるため、数時間にわたって大雨が続きます。これは梅雨前線の少し南側にできます。
そのため、大雨になるのは梅雨前線付近のみでなく、その南側に注意が必要です。
さらに梅雨には雨の降り方によって”陰性”と”陽性”があります。梅雨の前半は”陰性”が多く、後半は”陽性”が多い傾向があります。また”空梅雨”と呼ばれる、あまり雨の降らない年もあるため、生き物のように感じます。
”陰性”:雨は強くないが、気温が低めで曇りや雨の日が続く
”陽性”:降れば大雨、合間に晴れ間もある
地震・雷・火事・親父
昔から「地震・雷・火事・親父」と言われていますが、山での雷は平地のそれとは比べものになりません。平地であれば、簡単に建物の中に退避することができるため、比較的安心できますが、登山中の落雷は髪の毛が逆立つと言われ、考えただけでも生きた心地がしません。
雷は”周囲より高い場所に落ちる”という性質があるため、周囲に高い木がない広い場所で起こることが多いですが、一度高いものに落ちた雷が、横から飛んでくる”側撃”という落ち方にも十分留意する必要があります。
しかし、”落雷は防げないが、落雷事故は防ぐことができる”と専門家の中では言われているそうです。
これは、やはり、誰しもが正しい知識に基づいた行動を選択することで可能になると思われます。
まず、雷はいつ・どこで発生しやすいかという点については、太平洋側に住んでいる人は夕立(夏の季語)を思い出す人が多いですが、日本海側は冬の落雷が多いことが知られています。また、夏の落雷は昼ごろから夜の初め(18時〜21時)が大部分ですが、冬の落雷は昼夜問わずいつでも発生します。
つまり、日本海側の山を登る際は「冬の雷」についても理解を深める必要がありますが、今回は「夏の雷」に焦点を当てます。
落雷事故を防ぐために知っておくべき知識
登山時に遭遇しやすい、「夏の雷」は、気温が上がる昼ごろから急激に増加します。
これは太陽が地面を強烈に暖め、地面付近にある空気が上昇し、積乱雲を作るからです。
さらに例えば、山ではその形状から、山の標高1,000m付近の空気(A)と平地の上空1,000m付近の空気(B)ではAの方がより地面に近いため、温まりやすい性質があります。そして、その空気が上空に登っていくことで積乱雲が発生し、さらにすっぽり空いた部分に海からの湿った空気が入り込むことによってさらに水蒸気を供給します。その結果、雷が発生しやすい条件が整います。
よくある雷にについての誤解
- 雷は金属に落ちる
- 雷は上からやってくる
- 雷雨の場合は木の下で雨宿りで凌ぐ(これは絶対にやってはいけません)
- 雷は海に落ちない
- 一度落ちたら近くには落ちない
- 雨が降っていなければ落ちない
この誤解は多くの人が信じているため、みなさんも周りの人に話してあげてください!
知っておくべきキーワード
テレビやラジオなどの天気予報で以下のキーワードが出た場合、いつもより落雷に注意する必要があります。
- 雷注意報
- 上空寒気
- 湿った空気
- 不安定な天気
山で雷に遭遇した時の正しい行動
- 稜線からただちに降りる
- 高い木が近くにない場合は、しゃがんで姿勢を低くする。
高い木がある場合は、4m以上離れて、45度以上の角度で見上げる保護範囲に入る。 - ピッケルやストックなどを頭上に振り回さない
- 周囲の人と4m以上の距離を取る
非常に参考になる資料
「1967年8月1日西穂高落雷遭難」に落雷時の様子が非常に詳細に記載されています。
なお、以前投稿した記事であるカーボンニュートラルなどの記事にも関連する、地球温暖化も雷被害を増やしている原因と言われており、気温が一度上昇すると落雷確率が12%増加するといった地球温暖化が落雷環境に影響を与えている可能性を指摘した論文もある。
地球温暖化により落雷確率が増えるということは、登山における落雷事故が増える可能性を意味しており、やはり、地球環境はどのような人間にも関係のある話だと改めて感じた。
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