カーボンリサイクルとは、地球温暖化の原因として問題視されるCO2の排出量を抑え、多くの資源を輸入に頼る日本にとって、CO2を活用し、エネルギーを循環させる未来につながる技術です。
エコでクリーンなエネルギーとして、注目されているカーボンリサイクルを理解するための1冊を紹介します。
前回、図解でわかる カーボンニュートラルについても紹介しましたが、昨今の世界的な異常気象などの災害から、脱炭素が声高に叫ばれるようになりました。
そのため、地球人として、未来を考えたときに、必要な知識と感じたため、本書を読むことにしました。
本書をお勧めする方は以下の通りです。
- 環境について少しは興味があるけど、全然知らない人
- 将来に不安のある人
- 今後の世界の情勢を知りたい人
- 現在の環境問題について不安がある人
世界的異常気象を防ぐには
ここ数年、日本だけでなく、世界各地から異常気象が報告されています。
例えば、ヨーロッパの43℃の熱波・スペインやオーストラリアの山火事・熊本や広島の「数十年に一度の大雨」などなど
今後地球温暖化が進行していくと、これらの異常気象はさらに増えると言われています。
そうなる前に(我々が地球に住み続けられるように)早く手を打つ必要がありますが、今のところ普通に生活している人にとっては、どこか他人事のように感じる話題かもしれません。
これら世界的異常気象は、産業革命前の1750年のCO2濃度277ppmから2020/1月のCO2濃度412.3ppmとなった、温室効果ガスの代表選手であるCO2濃度が増えたからと結論づけられています。
このCO2排出量上位5カ国は、中国(28%)、アメリカ(15%)、インド(7.3%)、ロシア(4.7%)、日本(3.2%)と我々日本人も世界の中でCO2の排出量が多い国です。
CO2濃度が増えることにより、地球温暖化が進行していきますが、長期的な目標として、世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べ、2℃より十分低く保つとともに、1.5℃未満に抑える努力を追求する必要があると言われています。
CO2を減らすためには?
本章では、CO2の減らし方(≒利用の仕方)について紹介していきます。
現在、CO2は工業用(ドライアイスや液化炭酸ガス)として利用されており、日本国内の供給量は年間約100万トン(うち75万トンが液化天然ガス)
CO2は元々持っているエネルギーが低いことで知られており、かなり安定した物質と知られてます。
(G:標準生成ギプスエネルギー(その物質から取り出し可能な電気エネルギー)が小さい)
CO2を元の元素(CやO)に分解するには、別のエネルギーが必要となり、そのエネルギーを化石燃料由来のエネルギーから取り出している場合、本末転倒の結果となる。
そのため、再生可能エネルギーなどのCO2を出さないエネルギーで対応する必要があり、現在の技術でCO2を劇的に減らすことはかなり難しいと言われている。
CO2の回収方法
①化学吸収法
化学吸収法と後述する物理吸収法は、排ガスを下から導入してCO2と吸収液を接触させて回収する吸収塔と吸収液からCO2を分離する再生塔からなります。
化学吸収法では、アミン系の水溶液に添加剤を加えたさまざまな吸収液が工業的に使用されており、プロセスライセンサーがMEDA ,OASE ,Adip法などの名称で販売している。
高純度のCO2を回収できるため、天然ガスの精製や水素製造装置で多く使われている。
アミン系水溶液の吸収液は再生塔を120℃に加熱することが一般的だが、国が支援しているプロジェクトであるCOURSE50(革新的製鉄プロセス技術)で開発されたESCAP法(Energy Saving CO2 Absorption Process)では、再生塔の温度が100℃以下に下がっており、経済性も向上している。
②物理吸収法
物理吸収法では、低温のメタノールを用いたレクチゾール法やポリエチレングリコールのジエチルエーテル溶液を用いたセレクソール法がある。
レクチゾール法:世界で100基以上の実績がある。吸収液は−40~−60℃の低温で運転することが特徴的
セレクソール法:世界で50基以上の実績がある。吸収塔の操作温度は通常常温だが、より低濃度までH2Sを除去したい場合、吸収塔温度が−5℃まで低くする場合がある。
③吸着分離法
吸着分離法はゼオライトなどの個体吸着剤を用いて圧力差あるいは温度差を利用して吸着と脱着をを繰り返す方式です。
高圧のガスと常圧の圧力差を利用する場合もあれば、常圧のガスと真空の圧力差を利用する場合もある。(PSA:Pressure and Temperture Swing Adsorption)
さらに温度を変化させるTSA(Thermal Swing Adsorption)をと併用したPTSA法もある。
CO2の利用技術
日本のCO2排出量は2013年実績で約12億トン/年であり、その内訳が、事業用発電分野(約35%)、産業分野(約29%)、運輸分野(約16%)となっている。(これらだけで約80%を占める)
なお、日本はこれらのほとんどをゼロにするという目標を掲げています。
CO2の利用技術には大きく分けて、直接利用と化成品原料、燃料としての利用法があります。
①直接利用法:炭酸飲料や食品封入ガス、ドライアイスなど
②化成品原料:不凍材や溶媒など
③燃料 :メタンなど
CO2を固定する技術
燃焼して発生したCO2を大気中に排出しないためには、どこかに隔離するか大気中に出ない形に変化させる方法があります。
ここでは、CO2を地中に閉じ込めるCCS(Carbon dioxide Capture and Storage)について説明します。
排出されたCO2は全量CCUにて有効利用されることが望ましいものの、排出量に対しての使用量が著しく少なく、現実的でないため、一部をCCSとして、地中に閉じ込めます。
このCO2の閉じ込め先として最も実用性が高いと言われているのが、地中の帯水層や圧入する方法です。この帯水層は砂や礫(れき)からなる多孔質の浸透性がある地層であり、地下水に満たされています。しかし、圧入しただけでは、再び拡散して大気中に放出される可能性があるため、帯水層の上に不透水層(キャップロック)構造が必要となります。
ガス田や油田はキャップロック構造により地下に化石燃料が蓄積された場所であるため、産油国や天然ガス産出国では、枯渇ガス田などを利用してCO2貯留ができるものの、日本国内には、大規模なガス田や油田がないため、キャップロック構造を有する帯水層(CO2貯留に適した場所)を探す必要があります。
他にも鉱物やセメントへ固定、炭素材のようなものに変換するCCU(Carbon dioxide Capture and Utilization)および、CO2を用いて原油を回収するCCUSがあるため、気になる方は本書をお読みください。
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