脱炭素革命への挑戦〜世界の潮流と日本の課題〜

書評

2050年脱炭素に向けて、世界が企業が大きな舵切りを取ったいま、脱炭素と無縁の人はいないと思います。
2020年10月20日、菅義偉首相(当時)が日本も”脱炭素革命”へ挑むことを正式に発表しました。

この脱炭素革命は本当にできるのか?産業革命以降から頼り続けている化石燃料から簡単に脱却できるのか?という問いが多くの人にあると思います。

さらに化石燃料産業の最後の砦であったトランプ大統領がバイデン大統領に変わった後、アメリカは直ちに『パリ協定』へ復帰し、グリーンリカバリーへ大きく舵切りしました。


※グリーンリカバリーとは
→新型コロナウイルスで打撃を受けたダメージを気候危機からの脱却を目指し再生可能エネルギーなどの分野へ積極的に投資し経済を立て直すこと

本書の序章は次のように締め括られています。

一人でも多くの人が、いますぐ温室効果ガスを減らすことの重要性に気づき、この”正念場の10年”に、自分ごととして、行動を起こしてくださることに期待している。

まさに私もこの文章を読んで、脱炭素を自分ごととして捉えることを心に誓ったため、本ブログにて書籍をサラッと紹介させてください。(より多くの人に本を読んでいただき、意識を高めていただきたいと思います。)


ビルド・バック・ベター

すでにグリーンリカバリーについて述べたが、ここではさらに広い意味である『よりよい復興=ビルド・バック・ベター』についても紹介しておきたいと思います。

コロナ禍による経済の落ち込みを復興させるためには巨額の投資が必要になるが、従来通りの投資をしていては、喫緊の課題である、地球環境に悪影響を及ぼしかねません。
そこで打ち出された、グリーンリカバリーを通して、現在のコロナ禍をバネにして、気候変動の問題への対応とコロナ禍からの復興を同時に成し遂げる。

よりよい復興を果たせるかどうかが、鍵になると思います。

マイクロソフトとアップル

パソコン、スマートフォンの時代において、この企業を知らない人はあまりいないと思います。
GAFAM(Google ,Amazon ,Facebook ,Apple,Microsoft)と呼ばれる巨大プラットフォーマーは独自のカーボンニュートラル宣言をおこなっています。

中でもマイクロソフトは、2030年の『カーボンネガティブ』を打ち出しており、自社による植林やCO2回収が自社で排出する温室効果ガスの排出量を上回る状況を作り出すというかなり野心的な計画を発表しています。

さらに、アップルも2030年までに『カーボンニュートラル・すべてのサプライチェーンと製品使用時に出るCO2を実質0』とする計画を打ち出しています。
自社だけでなく、すべてのサプライチェーンという点が肝となっており、アップルに部品を納入する企業などに対しても、再エネなどへの転換を求めてくることが確実になっています。

何がグリーンで何がグリーンでないのか?

EUグリーン・タクソミー(分類)でグリーン投資として認定されることが大切になってきます。このグリーン・タクソミーはここ数年EUがかなり力を入れており、何がグリーンで何がグリーンでないかのEU独自の基準を作り、あわよくばそれをグローバルスタンダードにしようという戦略があります。

このように、世界的なルールを作る側に回らなければ、今後に事業で日本企業が海外企業に勝つことが難しくなってくる可能性があります。

ちなみに、日本の高効率石炭火力発電所はグリーンではないという認定のブラウンという認定になります。

さらにEUは”国境炭素税”にも力を入れており、地球温暖化対策に不十分な国からの輸入品には大きな関税を課し、気候変動対策に対する高い目標をEUが掲げることで、EU内の産業競争力を削ることにならないように2023年から移行期間を設け、2026年の全面導入を目指しています。

三菱商事さん、国際協力銀行さん、三井住友銀行さん、みずほ銀行さん、三菱UFJ銀行さん、石炭火力発電を輸出するって本当ですか

世界的な脱炭素の流れにはレピュテーションリスク(社会的評判リスク)を考えないといけません。
『NO YOUTH NO JAPAN』が『三菱商事さん、国際協力銀行さん、三井住友銀行さん、みずほ銀行さん、三菱UFJ銀行さん、石炭火力発電を輸出するって本当ですか』と題したキャンペーンで、ベトナム・ブンアン2石炭火力発電事業の輸出に関わっている金融機関に公開質問状を送りつけました。

これには、あのグレタ・トゥーンベリさんも参戦し、世界的に話題になりました。

ちなみに石炭火力案件に最も投資しているのは、日本の3大メガバンクです。
(新規案件については、投資しないことを表明済)

今後も気候機器に悪影響を及ぼす投資を続けていては、投資家たちに見放される可能性があることを十分理解しておく必要があります。

後戻りができなくなる『ティッピングポイント』という考え方

気候変動は現状、徐々に進んでいるが、科学者たちは、ある1点を超えたら急激に変化が起こり、後戻りができなくなると危惧しています。これをティッピングポイントといい、この転換点・臨界点は確実に近づいているのです。

地球の限界は、産業革命前の気温+1.5℃と指摘し、+2℃前後になると、気候変動がドミノ倒し的に進むリスクがあると評価しています。

さらに2021年8月時点では1.5℃上昇までの残り時間は6年4ヶ月という試算結果もあり、今生きている人類ほとんどに影響がある時期にティッピングポイントが訪れることとなります。

これから2030年までの約10年間が全人類にとって決定的に重要となり、6度目の大量絶滅を避けるためには、我々の意識改革が求められています。

脱炭素の救世主?敵?アンモニア

アンモニアと聞くと、異臭を放つ薬品というイメージが強いかと思います。
ここ最近日本では、石炭火力発電所へアンモニアを混焼する世界初の実証事業をおこなっています。

なぜアンモニアなのか?という点について解説すると、

  • 大手電力の石炭火力をアンモニア専焼にできた場合、CO2排出量を約2億トン削減できる
  • 石炭火力発電所と相性が良く、混焼する場合にアンモニアをボイラへ送り込むパイプラインの増設と専用のバーナに取り替える程度の改修で済む

既存の設備を使えるため、対策にスピード感があり、途上国などの石炭火力に依存せざるを得ない国にも展開できるため、肯定的な意見もあるが、アンモニア(NH3)は燃やしてもCO2こそ排出しないが、窒素酸化物(NOx)は発生する。その中でも一酸化二窒素(N20)は温室効果がCO2の約300倍であり、石炭火力を延命させるための座礁資産になることも危惧されています。

私たち一人ひとりに何ができるのか?

最後に本書で紹介されていた、具体的な行動例について紹介します。
小さいことの積み重ねで世の中が本当に変わるのか、と感じる人が多いと思いますが、膨大な数の個人が動けば、企業もビジネスモデルを変えざるを得ないといった言葉に魅力を感じたため、紹介させていただきます。

  • マイボトル・エコバックを使用しプラスチックを減らす
  • 金融機関を選ぶ
  • 再生可能エネルギーを選ぶ
  • 消費者としてサステナブルなブランドを選ぶ
  • リデュース・リユース・リサイクル
  • 公共交通機関に乗る
  • シェアリング
  • 木を植える、木を使う、屋上やベランダの緑化
  • 省エネルギーな職場・住まい
  • フードロスをなくす、地産地消、コンポスト
  • 牛肉の食べ過ぎや魚の乱獲などを避ける
  • 声を上げる、政治家を選ぶ、行政に訴える
  • 税制・規制、CO2を減らした人が得するなど仕組みを変える!

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