地球温暖化の原因であり、喫緊の課題である脱炭素に向け、世界が目標を掲げています。
日本でもアンモニアや水素を使った発電や水素自動車など、CO2を排出しないエネルギーの研究が進んでいます。
今後、この流れは加速度的に増えていくと思っています。
今回参考にさせていただいた書籍はこちらです。
一度、第6次エネルギー基本計画について簡単に紹介した記事もあるため、よろしければ、そちらもご覧ください。
水素社会が注目されることとなった経緯
2014年末トヨタから純水素燃料電池で走る自動車『MIRAI』が発表されました。
当時は既にハイブリッド車や電気自動車もありましたが、水素で走る車をメディアが大きく取り上げました。そのため、水素が『CO2を排出しないクリーンエネルギー』という立ち位置を獲得し、今まで静かに注目され続けてきました。
ちなみに2015年を『水素元年』と読んでいるそうです。
資源エネルギー庁がカーボンニュートラル実現に向けた鍵となる「水素」について紹介している記事はこちらです!
水素エネルギーの特徴
水素は陽子1個、電子1個のシンプルな構成となっており、元素周期表の左上にあることをご存知の方は多いと思います。中学や高校生の頃に習う、『すい・へー・りー・ベー・・・』ですね♪
その水素エネルギーの特徴を簡単にまとめてみます。
- 環境に有害な物質を出さない。
水素は燃焼しても、環境に有害な物質を出しません。燃焼とは酸素と反応することであり、中身にCが入っていないものが燃焼しても、CO2は発生しません。地球温暖化の影響となっている温室効果ガスの代表であるCO2の他にもさまざまな有害物質はありますが、水素は酸素と反応して、水しか出さないため、環境に有害な物質は一切出さないと言うことが特徴的です。以下の反応式を書いておきます!
2H2+O2=2H20 - さまざまな一次エネルギーから変換可能
そもそも一次エネルギーと二次エネルギーの違いはご存知ですか?
石油や石炭、天然ガスなどの加工されていないエネルギーのことを一次エネルギー
電力や都市ガスなどの形を変えたエネルギーのことを二次エネルギーと呼びます。
なお、水素は二次エネルギーです。(☜ここ重要)
現在日本の電力需要のほとんどを賄っている火力発電所ですが、石油や石炭、天然ガスから電力へ変換するのには35〜45%程度のエネルギー効率しかありません。(最新鋭でも55%程度と言われています。)
つまり、一次エネルギーから二次エネルギーへ変換する際にロスが発生しています。
一方燃料電池の場合(水の電気分解の逆の反応を利用)は、水素が持っているエネルギーを熱エネルギーなどへ変換する必要がなく、ロスが削減され、理論上は25℃で約83%のエネルギー効率と言われています。(現在の技術では35〜60%程度で、これから技術進歩が期待されています。) - 大量貯蔵も少量貯蔵もできる
石油や石炭、天然ガスは大きな船で一気に運び入れ、大きな貯蔵タンクや広大な敷地に保管されます。
しかし、水素は、キャニスターという缶コーヒーサイズ※から巨大タンクまでさまざまなスケールで貯蔵が可能です。
※缶コーヒーサイズに水素が40リットル充填可能
水素はどのようにして作られるのか?
前述した通り、水素は二次エネルギーです。つまり、石油や石炭、天然ガスのように地中を掘って出てくるものではありません。
ここでは、どのようにして作るのか?といった点について解説します。
水蒸気改質
水素の生成メカニズムで最も主流の方法が、この水蒸気改質です。
天然ガス(主成分はメタン)、LNG(液化天然ガス)、LPG(液化プロパンガス 主成分はプロパン)、ナフサ、灯油などを800℃の高温で水蒸気と反応させることで水素を発生させます。
原料の中の炭素と炭素、炭素と水素の結合が切れて、炭素がCOやCO2になり、水素が発生します。
しかし、この場合原料に化石燃料を使用するため、CO2が発生します。
せっかくCO2を発生しないクリーンなエネルギーの水素ですが、製造時にCO2を発生していては、地球温暖化を止めることができなくなります。
副生水素
副生水素とは化学工場などで製品を製造する過程で発生する水素のことです。
ガソリンのオクタン価を高める過程でも水素は発生します。
他にも苛性ソーダ(水酸化ナトリウム)工場でも水素は発生します。
これらの工場が製品以外に水素を外販用として生成することで、水素供給量は格段に増えることが期待されています。
水電解
上記の2種類は化石燃料を使用することによるCO2発生の懸念や、他のものを作る過程で発生する水素のため、自由に製造量をコントロールすることが難しいと言われています。
そのため、電気を使って、水を水素と酸素へ分解する水電解に期待が集まっています。
現状コスト的には主流の水蒸気改質と比較して約2倍と言われており、これから技術進歩によりコストダウンされれば、大量かつ安価に製造する方法として確立されるでしょう。
他にも研究段階の製造法が多数記載されていますが、気になる方は書籍にてご確認ください。
グリーン、ブルー、グレー
ブルー水素・グリーン水素など、水素に興味がある方は聞いたことがあるかもしれませんが、全く知らない人にとっては気体に色がついているの?と感じてしまうネーミングです。
水素は前述のとおり、燃焼時には水しか発生させないため、クリーンな二次エネルギーと言われますが、製造時には化石燃料を使う場合、CO2が発生します。
つまり、水素を作る過程でどの一次エネルギーを使うかで、本当にクリーンなのかどうかが分かれてきます。
それでは、順番に解説していきます。
グリーン水素
太陽光・地熱・風力を利用して、『製造時にも、燃焼時にも』CO2を発生しない水素
ブルー水素
化石燃料を利用して、水素を作るが、発生したCO2を地中に貯蔵するCCSなどの技術で回収した水素
グレー水素
製造時に発生したCO2を排出している水素
脱炭素社会を目指すのであれば、グレーよりもブルー、ブルーよりもグリーンを目指すべきです。
しかし、現在主流で動いているものはブルー水素やブルーアンモニアということも頭に入れておくべきポイントと言えるでしょう!
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